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アジアン・パラム シアター


菊池が斬る!?
アジアンパラムシアター・コラムニスト対談(韓国映画編)

菊池が斬る!?アジアンパラムシアター・コラムニスト対談(韓国映画編)


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「風の丘を越えて」から「シュリ」「JSA」へぶっ飛び?恐るべき韓国映画

菊池 話をちょっと広げて、韓国映画についてどう思う?
丸山 昔は「風の丘を越えて」くらいしか見ていなくて、韓国映画といえばわりと文化や歴史に根ざしたものというイメージがあったのね。しかも芸術的で悲劇的なイメージ。ところがそのあと「シュリ」「JSA」がバーンと出てきて・・・。みんなこういうイメージじゃないかな。今「猟奇的な彼女」がヒットしてるけど、これでまた韓国映画のイメージが変わるきっかけになると思うよ。
今回コラム書くっていうんでいろいろ見たけど、若手の監督がハリウッド系ではない、いい意味でのエンターテイメントをつくってるって思った。僕たちぐらいかもう少し下の人たちが多いと思うんだけど、逆に50代前後のいわゆる一番あぶらがのってるような中堅どころの人たちはどうなの?あんまりいないような気がするんだけど。
佐々木 「祝祭」の人は?イム・グォンテクだっけ?
菊池 あ、「風の丘を越えて」の監督やね。
マスター (突然割り込み)昔韓国では、映画はよく見るけど韓国の映画はあんまりおもしろくなくて見てなかったの。それがイム・グォンテクの「将軍の息子」が出てきて、「韓国映画もおもしろい」ってみんなに思わせた。イム・グォンテクがきっかけで韓国人も韓国映画を見るようになったのよ。
佐々木
佐々木氏と菊池

佐々木氏と菊池
イム・グォンテクは「祝祭」「風の丘を越えて」は見ましたよ。アジア映画というと、中国第5世代の「紅いコーリャン」から始まってアジアの独特の文化が世界に評価され出したでしょ。その流れのなかで「風の丘を越えて」を見たのよ。いわゆる「僕らの知らないアジアの文化映画」としてひとくくりにしてたのね。それから少ししてホン・サンス監督の「豚が井戸に落ちた日」というちょっとした小品が入ってきて、次に「八月のクリスマス」がスマッシュヒットしてこれはすごいと思ってたら「シュリ」「JSA」が来て、「韓国映画はどーなってるんだっ!?」って思った。「シュリ」「JSA」だけだったらこうは思わないけど、芸術系も撮りつつ大味な大作もつくれる。日本では「八月のクリスマス」はつくれるかもしれないけど「シュリ」「JSA」はつくれないでしょ?とにかくあの時は韓国映画にものすごいパワーを感じたなあ。

「八月のクリスマス」は映画の奇跡!!

菊池 その「八月のクリスマス」についてはどうなん?
丸山 封切りでは見ていなかったんだけど、ビデオで見てびっくりした。突出した1本だと思ったね。
佐々木 僕も韓国映画で1本といえばやっぱりこれですかね。確かにその前の「風の丘を越えて」も突出した作品なんだけど、「八月のクリスマス」はそれとは別の意味で突出してると思うのよ。実はホン・サンスの「豚が井戸に落ちた日」あたりから、これまでの韓国映画で扱われていた伝統文化とか、「荷馬車」に描かれていたような生活ではなくて、都市に生きる今の人間を描いたものが出てきたんだよね。で、韓国ではホン・サンスたちの流れを「新世代」とひとくくりにしているらしいんだけど、「八月のクリスマス」はそういう流れのなかで出てきた作品であることは間違いないと思う。
丸山 もうちょっと広く捉えてみても、韓国のなかで文化や歴史がもちろんあって、さらにヨーロッパやアメリカやひょっとしたら日本の影響も受けながら、いろんなものが積み重なったところにポーンと「八月のクリスマス」のような奇跡的な作品が出てきたんだろうね。
菊池 丸山はんが最初に紹介した「春の日は過ぎゆく」の監督も「八月のクリスマス」のホ・ジノやね?
丸山 あれは凄い好き。身につまされるというか。(笑)「何でそうなんだよー」「それはやめろ」ってスクリーンにつっこみたくなる。
佐々木 逆に僕はあんまり好きじゃないっすね。「八月のクリスマス」が強烈すぎたせいもあるんやけど。もちろん素晴らしい部分もたくさんあるけど、音を聞く商売なのにBGMを入れてたり、音に対する繊細さが感じられないのよ。
菊池 ふーん、そういう見方もあるんやな。丸山はんはホ・ジノを「日常を淡々と描く」と書いとったけど、そのあたり佐々木はんはどうなん?
佐々木 僕もそう思いますよ。日常の生活を繊細さをもってちゃんと映画にできる人。実は「八月のクリスマス」のコラムで最初没原稿にしたのは「リチャード・ギアとジュリア・ロバーツでこれが撮れるか」っていう内容だったの(笑)。あんなふうに繊細さを持っては撮れないだろうって。コラムのなかで壁(ガラス)を「愛の象徴」と書いたんだけど、映画論に「映画は壁を撮ることだ」というのがあるのね、ひとつのメタファーとして。それをアジア的な感覚で再構築している映画だと思うのよ。単純に欧米対アジアにしたら、絶対欧米には真似のできないものだと思う。日本ならひょっとしたらつくれるんじゃないかと期待してるんだけど。
菊池 佐々木はんは映画の勉強しただけあって「映像表現」という部分にこだわりがあるような感じするんやけど、その壁(ガラス)を使った表現方法は「映像ならではの表現」って言えるん?
佐々木 まさにそう。「八月のクリスマス」で主人公が退院して店のガラス越しに相手の女性を見るところなんて、言葉は一切出てこないのに心情を見事に表現してると思うんだよね。言葉で状況とか気持を説明するんじゃなくて、あくまでも映像で、しかも映像でしかできないやり方で表現するところが映画のおもろいとこだと思う。 映画ってさ、ストーリーで語られるより「あそこよかったよね〜」って場面やシーンで語られることのほうが多いと思うのよ。
丸山 わかるわかる。でもいい映画ってさ、多分場面とストーリーの両方がセットになってると思うよ。
佐々木 確かにそうですね。ストーリーのもっていきかたが下手だと場面も印象に残らないし。
丸山 「八月のクリスマス」はそういう意味で、心情からも入れるし、表現という部分からでもストーリーからでも入れる。全部がマッチしているからこそ「奇跡」なんだろうね。

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ラインナップ
第30回 少年、機関車に乗る
第29回 風の丘を越えて〜西便制〜
第28回 インファナルアフェア
第27回 ボイス
第26回 HERO
第25回 ほえる犬は噛まない
第24回 欲望の翼」つづき
第23回 猟奇的な彼女
第22回 欲望の翼
第21回 ディープ・ブルー・ナイト
第20回 藍色夏恋
第19回 われらの歪んだ英雄
第18回 夏至
第17回 接続 - ザ・コンタクト -
第16回 カップルズ
第15回 ディナーの後に
第14回 祝祭
第13回 豚が井戸に落ちた日
特別編 コラムニスト対談(韓国映画編)
第12回 魚と寝る女
第11回 ペパーミント・キャンディー
第10回 ラスト・プレゼント
第9回 グリーンフィッシュ
第8回 友へ チング
第7回 カル
第6回 反則王
第5回 美術館の隣の動物園
第4回 イル・マーレ
第3回 アタック・ザ・ガスステーション
第2回 八月のクリスマス
第1回 春の日は過ぎゆく


「猟奇的な彼女」
2001年。クァク・ジェヨン監督。ちょっと過激で突拍子もない女の子と心優しい男の子のラブコメディ。韓国では500万人を動員し大ヒット。現在日本でも公開中。スピルバーグのドリームワークスが75万ドルでリメイク権を購入し話題を呼んだ。

イム・グォンテク
1936年全羅南道長城生まれ。韓国映画界を代表する巨匠。1962年に「豆満江よさらば」で監督デビューし、現在までに100本近い作品を撮りつづけている。80年代には国際的にも注目され、90年代前半の「将軍の息子」シリーズ(シリーズ1作目は1990年、2作目1991年、3作目1992年)や「風の丘を越えて〜西便制」(1993年)では韓国国内の興行記録を次々と塗り替えた。韓国の伝統文化を素材にしたものが多く、「風の丘を越えて〜西便制」ではパンソリ(韓国伝統の歌)を、「春香伝」(2000年)ではパンソリで歌い継がれている悲恋物語を題材に扱っている。

中国第5世代
少年時代に文化大革命の混乱を経験した世代。80年代から90年代前半にかけてこの世代が中心となった中国映画が世界から注目を集めた。「紅いコーリャン」(1987年)のチャン・イーモウ監督や「黄色い大地」(1984年)のチェン・カイコー監督がその代表。

「豚が井戸に落ちた日」
1996年。人気監督ホン・サンスのデビュー作。売れない作家を中心に都会に生きる男女4人の姿を描いた作品。


「荷馬車」
1961年。カン・デジン監督。妻に先立たれた馬夫が主人公。さまざまな問題を抱える4人の子どもたちと貧しいながらもをたくましく生きる姿を描く。

ホ・ジノ
1963年全州生まれ。脱サラして韓国映画アカデミーに入学。卒業後、助監督経験を積んだ後に1998年「八月のクリスマス」でデビュー。第19回青龍賞新人賞など、各賞を総なめにする。二作目が「春の日は過ぎゆく」。

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