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アジアン・パラム シアター


第27回 単なる<『リング』携帯版>ではない    
ボイス

韓国では、ここ数年、ホラー映画ブームが続いているらしい。その先鞭をつけたのは、1998年公開の「女高怪談」あたりからだそうで、その後、「リング・韓国版」(1999)、「悪夢」(2000年)とスマッシュヒットが続き、その余勢を買ってか、日本映画の「呪怨」「呪怨2」も連続しての大ヒットになったとのこと(特に「呪怨2」は、韓国で公開された実写日本映画の一番のヒットだそうです)。内容的にも、当初はアメリカ映画「スクリーム」系のハイティーン・ホラーが多かったのが、日本版「リング」の影響プラス、韓国ならではの「ハン」の精神もミックスされ、独特の「念」や「呪い」を描いたコリアン・ホラーが形成されてきたらしい。

先ほどから「らしい」「ようだ」の連発で、自信のない書き方になっているのは、上記の映画をいずれも未見な上に、ホラー映画について詳しいわけでも好きなわけでもなく、それらについて語る資格がないからなのです、ハイ。じゃあ何で今回この映画を選んだのかと聞かれれば、公開前から結構話題になってたのと、何より、現在ビデオで見られる最も新しい韓国映画だからなのでした。

で、観た感想を一言で言うと・・・「結構よくできてんじゃん」という感じでしょうか?期待しないで観た分、思ったより面白く観られました。でも、正直言ってあんまり怖くはないです。予告やCMを観た方ならお分かりでしょうが、あの「女の子の顔」が一番怖く、それ以外は大して怖くはない。では何が面白かったのかというと・・・・

援助交際の記事を書いたことが原因で、しつこい脅迫電話に悩まされていたフリーライターのジウォン(ハ・ジウォン)は、親友のホジョン(キム・ユミ)の夫・チャンフン(チェ・ウジェ)の勧めで、彼らが持つ郊外の別荘に一時避難することになった。同時に携帯電話の番号も変え、これで脅迫電話に悩まされずにすむ、と思ったのもつかのま、ジウォンの携帯電話に出てしまったホジョンの娘・ヨンジュ(ウン・ソウ)が、何かに取り憑かれたような異常な行動を取り始める。そしてジウォンの周辺でも奇妙な出来事が続いて・・・

恐らくこの映画を観た多く(たぶんほとんど)の人が、「これ、『リング』の携帯版じゃん」と思うだろう。呪いのビデオテープの代わりに呪いの携帯電話(しかし、この携帯を選んだところがIT王国・韓国らしい)。ヒロインは、それを手にしてしまい、否が応でも呪いの謎を解かなくてはならない羽目になる女性ジャーナリスト。貞子に代わる「少女」の存在。呪いの元にある「ある怨み」。
解き放ったはず(『リング』で言えば、井戸から死体を引き上げた)なのに解けない呪い、などなど。類似点は余りに多く、監督のアン・ビョンギ自らの「日本版『リング』が好き」という発言を斟酌するまでもなく、その影響を受けているのは明らかである。

なのに、この映画が単なる<『リング』携帯版>にならなかったのは、犯人(?)像の造形にある。正直言って、真相が判明する下りの回想シーンは、くどい。そんなに丁寧に描かなくても分かるよ〜、と言いたくなるほど、「なぜこうなったか」が執拗に描かれていく。それは、同じ系統の映画で言えば「カル」の分からなさ加減と対極にあり、たぶんこっちの方が白黒はっきりさせなければ気がすまない韓国人気質がよく現われているのだとは思うけど、ちょっとやりすぎ(分からなくても分かりすぎても文句言うのね、ごめんなさい)。

だが、この犯人(ていうのもおかしいけど、何て言ったらいいの?ネタバレしちゃうといけないから性別も書けないし。あ、そう書いただけでもヒントになっちゃうなあ。とにかくすべての元凶)の動機には、ある「哀しみ」がある。それが映画そのものに奥行きをもたらし、ただのホラーに終わってないところだと、私は思うのだ(やっぱり犯人像の造形とか動機っていうのは大きいよねえ。「踊る大捜査線」がつまんないのも、そこにあるもんねえ)。

さらに言えば、この映画のヒロインであるジャーナリストが、事件に巻き込まれたのには、ある「必然」があり、その一点だけ見れば、この映画は「リング」を越えているといっていい。いや、必然どころか、もしかしたらヒロインこそが全ての元凶なのかもしれない。おお、そう考えると結構深いぞ、この映画。

どうですか、未見の方、観たくなりましたか?でも、あんまり期待しないでね。私の場合、「期待してなかった分面白かった」のかもしれないから。弱気ですみません。

最後に気になったことを一つ。「携帯電話の呪い」と言っても、この映画の場合、「電話番号」が呪われているのであって「電話機」が呪われているわけではない。だから、ラストで携帯を捨てても何の解決にもならないと思うんだが。解約したって番号はまた誰かが使うんだろうし。そう言えば、この番号は、監督自身の番号らしい。一生呪われたまんまか、アン・ビョンギ。




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コラムニスト 丸山 正樹

1961年東京生まれ。早稲田大学演劇科在学中に、シナリオ講座にてシナリオを学ぶ。 1996年、Vシネマ「湘南爆走族/帰ってきた伝説の5人」でシナリオライターデビュー。Vシネマ「痴漢白書9」ほか、テレビシナリオに「恋、した。」、舞台脚本として「アナザールーム」(椿組)など。企業・官庁の広報ビデオのシナリオも多数てがける。

連絡先:maruyama@asianpalam.com

ボイスデータ 2002 韓国/原題:phone
---- CAST
ジウォン ハ・ジウォン
ホジョン キム・ユミ
チャンフン
(ホジョンの夫)
チェ・ウジェ
ヨンジュ(娘) ウン・ソウ
---- STAFF
監督 アン・ビョンギ
脚本 アン・ビョンギ/イ・ユジン
撮影 イ・ヨンシク
----
製作 トイレット・ピクチャーズ
投資・配給 ブエナビスタ・インターナショナル・コリア
ビデオ・DVD ブエナ・ビスタ
日本公式ホームページ http://www.movies.co.jp/voice/
ラインナップ
第30回 少年、機関車に乗る
第29回 風の丘を越えて〜西便制〜
第28回 インファナルアフェア
第27回 ボイス
第26回 HERO
第25回 ほえる犬は噛まない
第24回 欲望の翼」つづき
第23回 猟奇的な彼女
第22回 欲望の翼
第21回 ディープ・ブルー・ナイト
第20回 藍色夏恋
第19回 われらの歪んだ英雄
第18回 夏至
第17回 接続 - ザ・コンタクト -
第16回 カップルズ
第15回 ディナーの後に
第14回 祝祭
第13回 豚が井戸に落ちた日
特別編 コラムニスト対談(韓国映画編)
第12回 魚と寝る女
第11回 ペパーミント・キャンディー
第10回 ラスト・プレゼント
第9回 グリーンフィッシュ
第8回 友へ チング
第7回 カル
第6回 反則王
第5回 美術館の隣の動物園
第4回 イル・マーレ
第3回 アタック・ザ・ガスステーション
第2回 八月のクリスマス
第1回 春の日は過ぎゆく

女高怪談
日本でのビデオタイトルは「囁く廊下〜女校怪談〜」。ある女子高を舞台に、9年前に自殺した女子高生の霊が出る、という噂が流れる。学校の中で殺された教師がその生徒の名を叫んだことから、その噂がさらなる事件を呼ぶ・・・というストーリー。パク・キョヒン監督。イ・ミヨン主演。「少女たちの遺言」という続編もつくられた。

呪怨、呪怨2
ジャパニーズ・ホラーの二大巨頭、高橋洋と黒沢清が驚愕・絶賛したという触れ込みの同名ホラー・ビデオの映画版。一作目の主演は、奥菜恵。映画史上空前の恐怖で日本列島を震撼させ(たらしい)、世界20カ国での公開が決定。監督の清水崇はリメイク版でのハリウッド・デビューも間近だという。二作目の主演は酒井法子。

ハ・ジウォン
1979年ソウル生まれ。1500倍の倍率だったオーディションを突破し、2000年に「真実ゲーム」で映画デビュー。同年に「リメンバー・ミー」「悪夢」と立て続けに主演するという破格の出世振り。「リメンバー・ミー」では第21回青龍賞女優助演賞を受賞。「悪夢」「ボイス」で続けてアン・ビョンギ監督のホラー映画で主演を務め、ホラー・クィーンの名をほしいままにしている。

アン・ビョンギ
1967年生まれ。ソウル芸術専門大学映画科卒。1980年代に実験的な短編映画を製作した後、助監督経験を積み、2000年「悪夢」で監督デビュー。この映画は、「ハリウッド・ホラーと日本ホラーと韓国ホラーの特徴をミックスした正統派ホラー」だそうです。とにかくホラー好きらしく、KBSの納涼特集劇「悲鳴」の演出も手がけている。次回作もホラーなのだろうか?



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