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ディナーの後に 〜現代韓国女性について誰も知らない二、三の事情 |
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前回、「韓国映画史上エポックメイキングになった作品と、最新の映画を交互に紹介」すると言った通り、今回は「2002年に日本で公開された韓国映画の中でベスト3に入る感動作!」と評判の映画を取り上げようと思っていたのだが・・・観たら、これが私にはどうしても面白いと思えなかった。なので、急遽予定を変更。前回触れた<韓国新世代映画>の流れをもう少し引っ張って、「NEO KOREA 韓国新世代映画祭」でも上映されたイム・サンス監督の『ディナーの後に』をご紹介します。
この作品、「現代の韓国の若い女性がセックスについてあけすけな会話を交わす」映画だということだけは知っていた。で、観てみたら・・・おお、前評判通り。あけすけな会話だけでなく、セックスそのものもふんだんに描かれており、性描写については日本の何倍も厳しいはずの韓国で、よくこれが一般映画として公開されたもんだ、と驚き、かつ感心した。
主人公は、デザイン事務所を経営しているホジョン、ホテルのレストランでウェイトレスとして働くヨニ、大学院生のスニ、の3人。3人の年齢ははっきりは分からないが、20代後半から30代前半、というところだろうか。この3人に、ヨニの恋人・ヨンジャクを加えた食事の席での、女性たちによる赤裸々な会話から映画は始まる。だが、こんなのは序の口。この後、過激な台詞、シーンのオンパレードだ。ただ過激なだけだったらただのポルノだが、この映画の場合、スケベかつ何とも示唆にとんだ台詞が満載なのだ。
その中から一つ紹介してみよう。
「男も女も興奮するとネバネバした液がでるでしょ?接着剤みたいに、それで壊れた関係を修復できるの。でもあれほどやっかいなものもないけどね」
ね、スケベかつ示唆にとんでるでしょ?
さて、この3人のヒロインのうち、言うことも成すことも一番クールでイカシテルのが、リーダー格のホジョン。「一人の男とワンパターンのセックスをして一生を終えるなんて耐えられない」と言う台詞通り、中年男との不倫や若い部下をペット扱いしたりと、奔放なセックス・ライフを満喫しており、結婚するつもりは毛頭ない。一番年下のスニは、言うことは過激だが、実はまだ処女、という設定。ヨニはこの中では一番ノーマルで、セックスそのものより、好きな男と愛を交わすという行為に重きを置き、ヨンジャクと結婚して安定した生活を送ることを望んでいる。ちょっとできすぎ、という感じもしないではないが、なかなかバランスのとれたキャラクター配置だ。
特にヨニ役のチン・ヒギョンは、シナリオに惚れ込み自ら出演を志願したというだけあって、大胆なセックスシーンにも果敢に挑み、モデル出身の美しい肢体を惜しげもなく晒している。当初は三人の中では一番セックスに関して控えめに見えたこの中山美穂似の美形が、ヨンジャク(これが売れないシナリオライターという設定で、生活力はないわ不誠実だわ、どうしようもない男。ちょっと身につまされる)に振られたあたりから、初対面の男を自分からベッドに誘ったり、昔の男の上に強引に跨ったりと、少しずつセックスに開放されていく様が、なかなかよろしい。
韓国女優随一の国際派女優であるらしいカン・スヨン演じるホジョンは、最初こそクールに決めていたものの、最後の方は情にほだされる普通の韓国女性になってしまって(ホジョンとヨニの役どころがいつの間にか入れ替わる辺り、狙いではあるのだろうが)、ちょっと残念。
不倫あり、自慰行為あり、はたまた大人のオモチャ屋のシーンまであり、「韓国はセックスに関しては保守的と聞いてたけど、全然そんなことないじゃん、日本と同じじゃん」と観ていくと、突然、ホジョンが不倫相手の妻から「姦通罪」で訴えられる、というくだりがあって、虚を突かれる。
そう、韓国にはいまだに「姦通罪」というものがあるのだ。うーん、そういうお国でこういう映画が堂々とつくられ、ヒットし評価を得るというあたり、韓国映画が、いや韓国そのものが以前とは明らかに変わってきていることがよく分かる一篇だ。
セックスを描いた映画はもちろん世界中に山ほどあり、それだけでは今更目新しくもないが、この映画が新鮮に映るのは、女性の側からセックスを描いていることに加え、それを通して、女性の様々な価値観、生き方をも描こうとしたところにある。
もちろん、いくら「20代後半の女性を対象に6ヶ月間に渡る取材をした」といっても、監督は男性であるし、この映画で描かれていることが女性の意見全てを代表すると思ったら大間違い、ということは百も承知しています、はい。
この映画への感想として、「女性が言いたい放題で、男性から見ると不快なのでは」と言う意見があるらしいが、全然そんなことはない。「へー、女の人ってこんなことを考えてるんですか」と非常に興味深く、むしろ男性の方が楽しめるのではないか。
それともう一つ、こういう映画を語る時、必ず「セックス描写は過激だが、まじめな映画でいやらしさは微塵もない」という言い方をする向きがあるが、そんなことはないでしょ。やっぱイヤらしいでしょ。別にイヤらしくてもいいと思うんだが、面白ければ。それとも、イヤやらしい映画を面白いと思ってしまってはいけないのか!って一体誰に怒ってるんだ、俺は?
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コラムニスト 丸山 正樹
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1961年東京生まれ。早稲田大学演劇科在学中に、シナリオ講座にてシナリオを学ぶ。 1996年、Vシネマ「湘南爆走族/帰ってきた伝説の5人」でシナリオライターデビュー。Vシネマ「痴漢白書9」ほか、テレビシナリオに「恋、した。」、舞台脚本として「アナザールーム」(椿組)など。企業・官庁の広報ビデオのシナリオも多数てがける。

連絡先:maruyama@asianpalam.com
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▼『ディナーの後に 〜現代韓国女性について誰も知らない二、三の事情』データ |
1998 韓国/原題: |
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---- CAST
| ホギョン |
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カン・スヨン |
| ヨン |
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チン・ヒギョン |
| スン |
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キム・ヨジン |
ヨンジャク
(ヨンの恋人) |
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チョ・ジェヒョン |
チャンユン
(ホジョンの恋人) |
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ナム・ミョンニョル |
ハン・ギュシク
(漫画家) |
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ソル・ギョング |
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---- STAFF
| 製作 |
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チャ・スンジェ |
| 監督・脚本 |
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イム・サンス |
| 撮影監督 |
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ホン・ギョンピョ |
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| 製作・提供 |
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ウノ・フィルム 三星映像事業団 |
| ビデオ |
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アップセット |
| DVD |
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クリエイティブアクザ パイオニアLCD |
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マスターのちょっと一言
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この映画を直観的に酒に例えて一言。
「ウゾー」
(アニス(ウイキョウ)を使ったギリシャの酒で、水で割ると白濁する。フランスのペルノやトルコのラクと同種)
個性が強いため、好きな人は好きだけど嫌いな人はにおいをかぐのもいや。マスターは苦手な方。ちょっと後味が・・・。
どうでもいいけど、カン・スヨンはマスターと小学校が一緒。彼女は当時から名子役として活躍していたが、小学校で撮影があった時、マスターはとなりで手をつないで映ったことがある。でも未だに何の映画だったか不明のためマスターの映画デビューは謎のまま。
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イム・サンス
1962年、ソウル生まれ。映画評論家イム・ヨンの息子。延世大学卒業後、韓国映画アカデミー5期入学。イム・グォンテク監督の下で「将軍の息子」「将軍の息子2」の制作に関わり、パク・チョンウォン監督の「永遠なる帝国」ではシナリオを脚色。本作で監督デビュー。第19回青龍賞新人監督賞受賞。第2作として、「ティアーズ」(2000年)がある。「体験に基づくシナリオがベスト」が持論で、二作とも徹底した取材をもとにシナリオを書き上げている。
チン・ヒギョン
1968年生まれ。ファッションモデルとして芸能界入りし、1994年の「コーヒー・コピー・鼻血」で映画デビュー。悪女を演じた第2作目の「爪」(1994年)の演技で第33回大鐘賞新人女優賞を受賞。1996年の大ヒット作「銀杏のベッド」で一躍スターになる。
カン・スヨン
1966年生まれ。1986年の「シバジ」でヴェネチア映画祭主演女優賞を受賞し、韓国女優一の「ワールド・スター」となる。その後も、1989年の「ハラギャティ」の演技で第16回モスクワ映画祭女優主演賞受賞、1996年に開かれた第一回釜山国際映画祭ではコンペ部門の審査委員長を務めるなど、ワールド・スターの称号にふさわしい活躍をしている。
姦通罪
そう、韓国にはいまだ姦通罪があり、1998年には、実に9916人もの人がこの罪で刑事立件されているそうです(少し古いデータでごめんなさい)。婚姻制度を維持し、家族生活を保護する、というのがその建前だが、時代遅れの感はいなめない。厳しい戒律があるアラブ諸国を除けば、姦通罪があるのは韓国と台湾だけ。現在、韓国内でも法改正の動きはあるらしいが、結局なくならないのは、男女ともにどこかでこの法律を必要としているのだろうか?
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