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| 祝祭 |
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「アイゴ!ア〜イゴ〜ォ!!ア〜〜イ〜グォ〜〜ォ!!!」 と叫ぶこと実に88回!本編が102分なので、何と1分15秒に1回の割合で「アイゴ」と言っていることになるというとっても"アイゴ"な映画なのです。
で、韓国映画の泣くシーンで度々耳にする「アイゴ」とは嘆きの言葉だと思っていたら、今回の「アイゴチェック」では怒ってる時にも使われているようなので、「アイゴ」とはそもそもなんじゃろか?と思い辞書を引いてみた(余談ですが、韓国語の辞書を初めて手にとったんですが、アルファベットや漢字ではなく、あの「○」や「ト」から言葉の意味を捜していくのは象形文字を解読してるみたいでとても新鮮であった)。
すると「喜怒哀楽、感嘆を表す言葉」とある。なるほど、今回の「アイゴチェック」の際、怒ってる時にもこの「アイゴ」が使われていたのがこれで納得。でもまぁ本作は、アン・ソンギ演じる小説家の母親(ハン・ウンジン)の葬式にまつわる話なのでそのほとんどが嘆きの言葉でしょう。つまり葬式をモチーフに1分15秒に1回の割合で嘆いている映画なのです。しかし、だ、88回もアイゴなのにちっとも暗くしみったれてなんかいない。むしろ明るくて生きる力に満ちあふれているのだ。それはなぜか?
ひとつには、葬式を祝祭(FESTIVAL)としてイベント化していることなんだと思う。たしかに喪服を持って屋根に登り村の人たちに母の死を大声で伝えたり、出棺の際、敷居を跨ぐ時に棺で急須を割ったりといったような韓国(の葬式)の文化、伝統、風俗といったことが描かれている場面も多々あるのだが、その屋根に登るロングショットが祭りの始まりを告げているようにも思われ、事実、それから「そ〜れそれそれお祭りじゃ〜」といわんばかりの勢いでワンサカワンサカ親類縁者が(田舎なので)皆車に乗って集まってきて、のどかな村が大渋滞してしまい、「なんで今日はこんなに車が多いんだ〜」と右往左往する姿はロバートアルトマンの群像劇のようでほのぼの笑えます。
この作品は、どうやら家族の中では問題児らしいヨンスン(オ・ジョンヘ)が葬式に現れたことから起こる家族の人間模様を描いているんだけど(もちろんこれだけでも充分おもしろいが)その葬式に集まった村の役人やアン・ソンギの仕事仲間たちが、あろうことか花札を興じ、葬式そっちのけで熱くなっていくといった一見関係ないエピソードが実に活き活きと描かれていて、夜になり死者を送る唄(「初更」「二更」)を「さぁ歌うぞ」と合図のように舞台となる家をロングショットに捉える時、おそらく街灯もなく普段は真っ暗な村にこうこうと灯る家の明りが、人々が集いうごめいて発光される"生きる灯"とでも呼びたくなる程なのだ。
さてこの死者を送る唄が最初はロックしてるというか、「元気だしていこうぜ」ってノリなんだけども、夜も更けて「三更」を歌う頃には葬式というよりもただのドンチャン騒ぎでしかなく、もう死ぬことも葬式もちっとも哀しいことじゃないと思えて来る。もちろんそれは「葬式=祝祭」として描いているからなんだけども、更にはバタバタと進む葬式や家族の愛憎劇の要所要所にちりばめられた「翁草は春を数える花」という童話がまた実にいいんだな〜 この「翁草は春を数える花」という童話は、孫はおばあちゃんの年を食べて大きくなるから、あばあちゃんはだんだん赤ちゃんになっていく・・・といったちょっと哲学っぽいというか、輪廻転生みたいな話なんだけど、これを「これでもかー」って感じのセットで撮影されていて、科白(子役のナレーション)も思いきり棒読み(だと思う)で、ハートフルというのかな〜 なんせイカしてるのよ〜
この童話がいわゆるグランドホテル形式の群像劇と絶妙のブレンドで描き出され観終わると「葬式っていいもんだな〜」などと思ってしまう。これってヤバイ?しかしね、この映画のラストは人の死や葬式をモチーフにしているのに「生きるって素晴らしい!」と思えてきてしまうんだよ。お見事!
※「アイゴ」が実際88回かどうかはかなり怪しい。単純に「アイゴ」だけではなく「ハルモニィ〜 アイゴ〜」等と叫んでいるので私のヒヤリングでは到底正確な数字とは思えません。ハングルに自信のある方、バードウォッチングが趣味の方、等々、どうかトライしてみて下さい。また違った映画の発見があるかもよ。
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コラムニスト 佐々木龍彦
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映像作家。1967年兵庫県尼崎市生まれ。
高校在学中より8ミリの製作を始める。88年東京映像芸術学院在学中「七転八倒」(16ミリ短編)製作、ゲリラ的上映活動。新潟映画塾講師も務める。主な作品は「雲ゆきバス」「空から見えた月」(共に16ミリ短編)など。

連絡先:sasaki@asianpalam.com
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---- CAST
| イ・ジュンソプ |
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アン・ソンギ |
| イ・ヨンスン |
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オ・ジョンヘ |
| ジュンソプの母 |
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ハン・ウンジン |
| 記者チャン・ヘリム |
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チョン・ギョンスン |
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---- STAFF
| 監督 |
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イム・グォンテク |
| 原作 |
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イ・チョンジュン |
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| 製作 |
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秦興映画 |
ビデオ・DVD (日本版) |
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シネカノン/アップリンク |
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マスターのちょっと一言
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この映画を直観的に酒に例えて一言。
「マッコリ」
やっぱり伝統的な庶民の酒マッコリでしょう。マッコリ飲みながら「アイゴ〜」を88回数えてみるか。
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イム・グォンテク監督
1936年全羅南道長城生まれ。韓国映画界を代表する巨匠。1962年に「豆満江よさらば」で監督デビューし、現在までに100本近い作品を撮りつづけている。80年代には国際的にも注目され、90年代前半の「将軍の息子」シリーズ(シリーズ1作目は1990年、2作目1991年、3作目1992年)や「風の丘を越えて〜西便制」(1993年)では韓国国内の興行記録を次々と塗り替えた。韓国の伝統文化を素材にしたものが多く、「風の丘を越えて〜西便制」ではパンソリ(韓国伝統の歌)を、「春香伝」(2000年)ではパンソリで歌い継がれている悲恋物語を題材に扱っている。
アン・ソンギ
52年ソウル生まれ。韓国映画界を代表する「国民俳優」。文芸作品からコメディまで幅広くこなす演技力と誠実な人柄がファンを魅了。「曼陀羅」(81)「ディープ・ブルー・ナイト」(84)「神様こんにちは」(87)「ホワイト・バッジ」(92)「太白山脈」(94)「美術館の隣の動物園」(98)「「黒水仙」(01)「武士」(02)「酔画仙」(02)等挙げたらきりがない。96年には日本映画「眠る男」(小栗康平監督)に出演、ひたすら眠り続けながらも存在感をかもし出している。次回作「ピアノを弾く大統領」「実尾島(シルミド)」にも大いに期待。
オ・ジョンヘ
71年木浦生まれ。幼い頃より韓国の伝統芸能パンソリを習い数々の賞を受賞。中央大学韓国音楽科に進学し人間文化財キム・ソヒに師事。92年「ミス春香」(ユン・ソナもこのコンテスト出身)に選ばれイム・グォンテク監督の目にとまり、パンソリをテーマに描いた「風の丘を越えて〜西便制」(93)に主演。「祝祭」でもパンソリを披露している。
ロバート・アルトマン
アメリカの映画監督 1作ごとに野心作を撮り続ける78歳のとっても元気な現役のおじいちゃん。その瑞々しいエロおやじぶりは今だ健在!
代表作 「M★A★S★H」(70)「ロング・グッバイ」(73)「ザ・プレイヤー」(92)「ショート・カッツ」(93)
等多数。
グランドホテル形式
エドマンド・グールディン監督作「グランドホテル」(32)が当時のMGMの看板スターを総動員してグランドホテルの中だけで群像劇を描いたことから、特定の出来事や場所に集まった人々の人間模様を描く映画をこう呼ぶようになった。「タワーリング・インフェルノ」なんてのはこの形式を上手くパニック映画にしてますね。
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