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| ペパーミント・キャンディー |
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丸山担当のこのコラム、2003年一発目の紹介映画は、前回の『グリーンフィッシュ』の監督であるイ・チャンドンの二作目、「ペパーミント・キャンディー」。この映画、日本のNHKとの共同制作で、1998年に韓国で日本映画が部分解禁されて以降最初の日韓合作となった作品で、第四回釜山国際映画祭で韓国映画として初めてオープニング作品に選定されたほか、カンヌ映画祭監督週間部門に出品されるなど、国際的に非常に高い評価を得た作品らしい。
らしい、という書き方になったのは、私自身はこの作品の内容については実はあまり事前知識がなく、そのポップなタイトルと、何度か目にした男が両手を挙げているスチール、現在から過去へと逆行していくという内容などから、軽いタッチのファンタジーかと思い込んでいたぐらい。 |
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もし同じような思い込みがある方(そんな奴、俺だけか?)、あるいは、映画はやっぱり面白おかしくなけりゃ、というお考えの方には、この映画、あまりお勧めしません。ポップで軽いどころか、非常に重く、ある意味暗く、非常に内省的かつ文学的な映画です。しかし、もし映画にある種の重みと作家性を求め、かつ韓国の現代史に興味のある方がいらっしゃったら、この映画、必見中の必見です。このコラムの一回目で、『八月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』の監督ホ・ジノのことを「台湾のホウ・シャオシン、中国のチャン・イーモウ、イランのアッバス・キアロスタミといった監督たちの系譜に、たった二作で加わった」と書いたが、イ・チャンドンもまたしかり。前回のコラムで「要チェック」と書いたが、大当たり!でございました。
さて、映画の内容はといえば、大学の同級生が20年振りに集まった同窓会ピクニックのシーンから始まり、その中の一人が驀進してくる列車の前に立ちはだかり、「戻りたい!!」と絶叫するカットから、その男の3日前の出来事、5年前、12年前、15年前、20年前、と過去に逆行していく。逆走する列車に我々観客も乗せられて、男の個人史につきあうと同時に、韓国のこの20年の歴史をも垣間見ることになる。
まずこの構成が、何ともため息がでるほど鮮やかだ。最初のシーンはともかく、3日前、5年前、と遡ったところぐらいまでは、主人公がとても嫌な奴に見え、全く感情移入ができないのだが、12年前、15年前、と遡っていくうちに、なぜこの男がこんな「嫌な奴」になってしまったのか、が分かっていく。そして15年前のエピソードでは、その背景として主人公が軍隊時代に遭遇したある事件が描かれ、そこにこそ彼が自殺しなければならない遠因があったことが明らかにされるのだ。
(この事件、資料を読むと「光州事件」ということらしい。私には映画を観ただけでは分からなかったが、韓国の人が見たらすぐに分かるのでしょうか?)
監督自身は「あくまで描きたかったのは個人史の方で歴史ではない」とコメントしているようだが、個人と社会は不可分であり、人間とは歴史に翻弄される生き物なのだということを、改めて認識させてくれる。
ラストシークエンスの20年前のエピソードでは、ファーストシーンと同じピクニックの場面が描かれるのだが、その時の主人公が何と純粋で、幸福だったことか。映画の中で何度となく語られる「人生は美しい」という台詞(この台詞、疑問形でも否定形でも使われるのだけれども)を象徴するような限りなく美しいシーンなのだが、彼の未来を知っている我々観客には、限りなく哀しいシーンでもある。それにしてもイ・チャンドン、前作の「グリーンフィッシュ」のラストシーンといい、美しくも残酷なラストを描かせたら並ぶものがいないのではないか?
主人公のキム・ヨンホを演じたソル・ギョング以外は、全てオーディションで新人俳優を中心に選んだというが、そのソル・ギョングが、やはり圧倒的に素晴らしい。20年にわたる年月を一人の俳優で描くとなると、ふけメイクや若作りのメイクなどがどうしてもわざとらしく映るものだが、このソル・ギョング、なぜかそれぞれの年代を演じて全く違和感がないどころか、逆にそれぞれ違う俳優が演じているのではと思わせるほど、性格が変わっていく過程を見事に演じ分けている。
ところでタイトルになっているペパーミント・キャンディー、日本語に訳せばハッカ飴、というところだろうが、あんなでかくて尖がってるハッカ飴、見たことない。あんなにたくさんはいらないけど、ちょっと食べてみたくなりました。
DVD発売中
韓国公式ホームページ
http://www.peppermintcandy.co.kr/
日本公式ホームページ
http://www.uplink.co.jp/film/paper/index.html
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コラムニスト 丸山 正樹
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お屠蘇気分のシナリオライター
忙しいのも一段落。さあお正月お正月。あ、この文章がアップされる頃はもう正月気分もなくなってるのか?ま、いいや。さあオセチにお屠蘇〜。
今回は特別に丸山が独断で選んだ2002年の映画ベスト。アメリカ映画「チョコレート」、フランス映画「まぼろし」、イタリア映画「息子の部屋」、スペイン映画「天国の口、終わりの楽園。」、中国映画「鬼が来た!」、日本映画「害虫」、韓国映画(新作)は「春の日は過ぎゆく」でした。

連絡先:maruyama@asianpalam.com
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| ▼『ペパーミント・キャンディー』データ |
1999 韓国/原題: |
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---- CAST
| キム・ヨンホ |
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ソル・ギョング |
| ユン・スニム |
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ムン・ソリ |
| ヨンホの妻 |
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キム・ヨジン |
| ミス・リー |
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ソ・ジョン |
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---- STAFF
| 製作 |
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ミョン・ゲナム |
| 監督 |
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イ・チャンドン |
| 撮影 |
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キム・ヒョング |
| 照明 |
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イ・ガンサン |
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| 製作 |
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イースト・フィルム |
| 共同製作 |
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NHK |
| 提供 |
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ユニコリア文芸投資 ドリーム・ベンチャー・キャピタル |
| 配給 |
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シンド・フィルム |
| 日本配給 |
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アップリンク |
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「ペパーミント・キャンディー」
ストーリー
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40才の男キム・ヨンホ(ソル・ギョング)は昔の仲間達のピクニックに現れたが、突然鉄橋の線路に登り自殺しようとする。迫り来る列車に向かう彼。そこから時間は彼の人生を遡っていく。
純粋な青年だったヨンホはなぜ妻子を裏切り、家庭を崩壊させたのか。何が彼を冷徹な男に変えてしまったのか。初恋の相手スニム(ムン・ソリ)になぜ冷たい態度をとらなければならなかったのか。3日前、5年前、12、15、19年前。
やがてヨンホの記憶は20年前スニムに初めて出会ったころに戻っていく。希望にあふれ、人生が美しいと思えたあの頃。もう二度と戻れないあの頃に。
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光州事件
1980年、韓国の全羅南道の光州で民主化を求める市民や学生と軍がぶつかり、死傷者約200人(政府発表)を出した事件。当時、この事件の首謀者として金大中は死刑判決を受けた。
韓国人が見たらすぐに分かる
年代的にも描かれている背景からも、光州事件だろうということは察しがつく。
ソル・ギョング
1968年生まれ。大学卒業後、演劇の舞台で活躍。1996年「つぼみ」で映画デビュー。初めての主役を演じた本作で、第37回大鐘賞新人男優賞、第21回清龍賞男優主演賞など、その年の賞を総なめした。最新作は、2002年の「公共の敵」。この映画でも第39回大鐘賞男優主演賞を受賞している。
あんなでかくて尖がってるハッカ飴
ヨンホが兵士として赴いた任地にスニムが送った手紙にはいつもペパーミント・キャンディーが入れられていた。青春の思い出の味。あの形については昔だからか、たまたまなのか、ちょっと不明。
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