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今回紹介するのは、第1回の「春の日は過ぎゆく」の主演ユ・ジテつながりで、1999年に韓国で公開され、コメディ映画では最大のヒットを記録したという『アタック・ザ・ガス・ステーション!』。
ユ・ジテがブレイクしたキッカケとなった映画と聞いていたのだが、この作品の中でのユ・ジテは主役四人の若者のうちの一人にすぎず、それ程の見せ場はない。なぜこの作品以降、彼がハン・ソッキュに並ぶ人気ナンバーワン男優になったのかは、ちょっと不思議。だが、映画自体は中々面白い。
ストーリーを要約するのはいたって簡単だ。四人の若者がガソリンスタンドを襲撃した一晩の物語。それだけで事足りてしまう。
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日本映画の低予算ものにもありがちな設定で、ストーリー自体にさして目新しさはない。ただ、冒頭のスピード感あふれる編集のセンスには、MTVやCMに近い感覚をうかがわせ、若い世代の監督の手になるものだということはすぐに分かる。実際、資料を見ると監督のキム・サンジンは、この映画の公開時には32歳とかなり若い。
さて、ストーリーそのものにそれ程の新鮮さはないとしたら、この映画の見所は何か。それは、主役の若者たちを演じる四人の役者のキャラクターの妙とそのコラボレーションにつきる。中でも、「ノーマーク」こと沈着冷静なリーダー役を演じるイ・ソンジェと、ちょっとオツムは足りないようだが腕っぷしだけは四人の中でも一番の「無鉄砲」という役を演じるユ・オソンがいい。
(ちょっとここで疑問。仲間が彼を呼ぶ「ムテッポウ」という言葉が、どう聞いても日本語の「むてっぽう」そのままに聞こえるのだ。日本語と韓国語で同じ発音をするのだろうか?)
お薦めの二人のうち、まず最初の一人。日本の男優で言えば、渡部篤郎と松重豊を足して二で割ったような雰囲気を持つイ・ソンジェは、とにかくその面構えがいい。どんな時にも表情を変えず、人質にしたガソリンスタンドの店長や店員たちといった弱い者に対する時も、警官やヤクザといった強い者に対する時も、全く態度を変えない。この四人の若者たちがどこで知り合い、何の目的でガソリンスタンドを襲撃したか、ということは映画の中では明らかにされず、唯一、それぞれのちょっとした過去、トラウマになったエピソードだけが描かれるのだが、このイ・ソンジェの場合は、元高校野球球児という設定で、このエピソードが、またちょっといい。たぶん実力はあったのだろうが、管理的な監督に反抗したために野球を諦めざるをえなかった、という挫折感が、彼の無表情な顔の中に漂い、中々魅せるのだ。たぶん韓国人(特に男性)は、こういう「男は黙って」タイプや、次に紹介するユ・オソンのような「無邪気なおバカ」キャラクターが好きなのではないでしょうか?ま、日本人も好きですけどね。高倉健と志村けんも共演してるし。
そのユ・オソンには、実はこの映画で観る前に、今年日本でも公開された韓国映画史上最高(2001年当時)の大ヒット映画「友へ/チング」で、私はすでに対面していた。「友へ/チング」では、主役のヤクザを演じ、中々泣かせる男気振りを発揮していたユ・オソンだったが、それに先んじて出演したこの映画の中では、前述したようにちょっとオツムは足りないが腕っぷしは強いという役を演じ、映画の中でコメディリリーフ的な存在になっている。特に、彼が作品の中で何度も命じる「ドタマ伏せろ!」という台詞とそれに続く行為は、かなり笑える。これは、頭を床につけて尻を持ち上げるという行為で、つらいだけでなくかなり屈辱的な格好である。どうやら体育会系ではしばしば用いられる体罰のようだ。(日本でいえば「正座」みたいなものか?)ユ・オソンは、この「ドタマ伏せろ!」だけでなく、人質の女性と連想ゲームのようなしりとりのような野球拳のような行為をしたり、昔懐かしい「馬飛び」(説明すると長くなるので省きますが、現在41歳の私は小さい頃によくやった遊びです。あの遊びのルーツは韓国だったのか?)をしたりと、韓国の若者の風俗紹介みたいな役柄も担っていて、そういうところも楽しめる。
韓国での公開時に、映画を真似した事件が実際に起きたことで社会的にも話題になり、一部の批評では、「無軌道な若者たちが意味もなくガソリンスタンドを襲うというその暴力性の背景には深刻な社会問題がある」という言われ方もされているようだが、そこまで深いものは正直感じなかった。ただ、「面白いことなんて何もない」という閉塞感、「何となく」事件を起こしてしまうといった無感動は、韓国日本を問わず現代に生きる私たちの気分を代弁するものではある。おおいに笑ってビデオを消した後に残ったのは、やはりイ・ソンジェのあの不気味なまでに無表情な顔なのだった。
(松竹ホームビデオよりビデオ発売中)
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コラムニスト 丸山 正樹
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悩めるシナリオライター。
現在、某監督某女優で久しぶりに映画の企画が進行中。どうなりますやら。
韓国で好きなのは、とんどん酒とユンソナ。

連絡先:maruyama@asianpalam.com
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| ▼『アタック・ザ・ガスステーション』データ |
1999 韓国/原題: (ガソリンスタンド襲撃事件) |
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---- CAST
| イ・ソンジェ |
| ユ・オソン |
| カン・ソンジン |
| ユ・ジテ |
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---- STAFF
| 監督 |
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キム・サンジン |
| 脚本 |
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パク・チョンウ |
| 音楽 |
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ソン・ムヒョン |
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| 製作 |
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良い映画/シネマサービス |
| 日本公開 |
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ビスタ |
| ビデオ発売元 |
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松竹(株) |
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「アタック・ザ・ガスステーション」
ストーリー
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誰も彼を止めることのできない元天才野球選手「ノーマーク」、音楽なしでは生きられないロッカー「タンタラ」、ひたすら無鉄砲な人生を歩む「ムデポ(無鉄砲)」、前衛女性ヌードを描く事にしか興味のないペインター「ペイント」。4人はただなんとなく(!)ガソリンスタンドを襲撃。しかし、襲ったスタンドには金がなかった。腹をたてた4人は社長やアルバイト達を監禁するが、そこへ客が次々とやってきてハプニングに次ぐハプニング、大逆転に次ぐ大逆転。果たしてこの4人の襲撃者は大騒動の中、無事にガソリンスタンドから脱出することができるのか。
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キム・サンジン
1967年、ソウル生まれ。助監督などを経て、1995年「金を持って高飛びをしろ」で監督デビュー。1999年にキム・ミヒとともに「良い映画」社を設立。その創立作品として製作した「アタック・ザ・ガス・ステーション!」が大ヒット。最新作には、2001年の大ヒットコメディ「新羅の月夜」がある。2001年には映画制作会社「監督の家」も設立。
イ・ソンジェ
1970年生まれ。テレビドラマの端役などを経て、KBSのドラマ「嘘」で注目を浴びる。1998年の「美術館の隣の動物園」で映画デビュー。この作品で第36回大鐘賞新人賞など、その年の新人賞を総なめにする。「アタック・ザ・ガス・ステーション」でさらに飛躍した後、2000年「フランダースの犬」2001年「エンジェルスノー」「新羅の月夜」2002年「公共の敵」など、話題作への出演が続く、今最も期待されている男優といえよう。
ユ・オソン
1968年生まれ。映画・演劇・TVで、個性的な脇役として活躍。1999年「SPYリー・チョルジン 北朝鮮から来た男」で初主演。同年、「アタック・ザ・ガス・ステーション」への出演で話題を呼んだ後、2001年の記録的な大ヒットとなった「友へ/チング」の主演でその人気を決定的なものとする。ほんと、この映画でのユ・オソンは良かった
ムテッポウ
正確にはムデポが近い発音。漢字が無鉄砲ではなく「無大砲」なところがもっと無鉄砲な感じを与える。意味は日本語を同じで、後先を考えずむやみにつっぱしること。
ドタマ伏せろ!
(テガリ パゴ)と言っている。テガリは「頭」の俗語でパゴは「つっこめ」。両足を広げて頭を地面につけ、その3点で体を支える。両手は後ろにまわす。軍隊や男子校の体罰の定番。
連想ゲームのようなしりとりのような野球拳のような
しりとり。やり方は日本と同じ。このシーンでは言えなかった方が服を脱ぐという罰ゲームつきである。
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