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「ソウルの食べ方歩き方」路地裏安食堂探検ガイドへもどる

「ソウルの食べ方歩き方」の著者:中山茂大の未発表コラムをどうぞ。

「ソウルの食べ方歩き方」ボツ原稿復活シリーズ
第12回「失礼な連中

ソウルを歩き回っている間に、何度か道を聞かれたことがあった。

一度目は仁寺洞で、三十代くらいのカップルだった。小ぶとりの男の方がハングルでなにか話しかけてきた。雰囲気からして道を聞いていることがわかったが、そのときはいま以上にハングルがわからなかったので、僕はとりあえず自分が日本人であることを伝えようと思い、自分を指さして、
「イルボン…」
といった。
すると男は不思議そうな顔をして僕を見て、そのあと軽い軽蔑の表情を見せて、
「ああ…」
といった。
そして僕に対してまったく興味を失ったようにそっぽを向いて歩きはじめた。
僕のことを日本人だと思ってああいう表情をしたのか、それとも頭の弱いかわいそうなやつ、と思ったのか、そのへんはわからないがとにかくあの男は無礼であったことは確かだ。

二回目はシティーホールの駅で待ちあわせをしていたときのことだ。
後ろから歩いてきた脂ぎった顔をしたいかにもせっかちそうな背広姿の男が、やはり道を聞いてきた。僕はそのときは前の時よりもほんの少しくらいならハングルがわかったので、
「ハングルは、わかりません」
と言おうとして、
「ハングルは…」
までいった。
しかし、そのときにはその男は、すでに僕の方を向いてはいなかった。
男はもうきびすを返してとなりにいた若い女に道を聞いていたのだ。
そして女からひとことふたこと聞くと、礼もいわずに去っていった。
僕の口は、そのときまで「ハングルは……」と言いかけたままの状態だったので、口を閉じる前に、
「なんだよ」
とつぶやいた。
たぶん僕が話が通じないとわかった瞬間、あるいはまどろっこしいやつだと思った瞬間に、あの男の頭の中から僕という人間の姿は消え去ってしまったんだろう。

韓国では目上の人間や両親に対して日本では考えられないくらいの敬意で接するが、他人に対してはまったくそういう考えがない人が多い。自分の肉親や交友関係の人間に対しては日本人が躊躇するくらいの親密さで接するくせに、あかの他人に対してはそういう態度がまったく欠落している。
日本人にとってはとても腹立たしいことが、そういう公共の場ではよくある。
電車で開いたドアから降りようとしたら、乗ろうとする中年の男が僕を押しのけて無理矢理入り込んできて、空いていた席にどっかりと座ったりするのを見ると、あまりの徳のなさにげんなりする。
あの男が家に帰って敬っているであろう両親は、あの男にたいしてどういうしつけをしてきたんだろう。
道を聞いてもラチがあかない相手はさっさと無視しろ、とか、降りる人を押しのけてでも座れとか教えたんだろうか。たぶんあの男の両親も道を聞いても礼もいわない粗雑な人間なんだろう。
もちろんそういう人間は日本にもたくさんいるが、韓国には多すぎる。
ああ腹立つ。

文・中山茂大

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ラインナップ 第12回「失礼な連中
  第11回「一ヶ月の取材の間、新村の下宿にお世話になった。
  第10回「となりの松坂が日本に来ることになった。
  第9回「韓国下宿生活
  第8回「へんな人その二
  第7回「アカスリ体験記パート2
  第6回「こまネタ
  第5回「まったく人の話を聞かないおっさん
  第4回「大元旅館で泊まっていた変なアメリカ人。
  第3回「ドミトリーおなら考
  第2回「怒れるサラリーマン
  第1回「冬なのに蚊がいるソウルの宿
 
写真BAR白&黒コミュニティの出版物

「ソウルの食べ方歩き方」路地裏安食堂探検ガイド ソウルの
食べ方歩き方

文:中山茂大
写真:Ju Jun Yong
イラスト:水野あきら
山と渓谷社
1200円(税別)

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ロバと歩いた南米・アンデス紀行 ロバと歩いた
南米・アンデス
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中山茂大
(なかやましげお)
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「ソウルの食べ方歩き方」の著者・中山茂大の記念すべきデビュー作。ロバとともに南米大陸5700キロ徒歩の旅。強盗に襲われ、大雨にみまわれ、寒い日も暑い日も歩き続けた307日の記録。貧乏トラベルライター中山の原点がここにある。

ベトナム横丁喧喧録 ベトナム横丁
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水野あきら
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文・イラスト
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