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「ソウルの食べ方歩き方」の著者:中山茂大の未発表コラムをどうぞ。


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第10回「となりの松坂が日本に来ることになった。」
彼はクリスチャンで、日本の教会との交流会で、二年に一度日本に来るんだそうだ。
ということはたぶん来年は日本の団体が韓国に行くんだろう。
松坂が日本に来ることは僕がソウルにいた頃に聞いていたので、だいたいの日程は知っていたが、僕なりの予定もあって、家にいなかったりした。
その日は日曜日で、いつものように夜更かしをしたので午後の一時半に電話が来たときも僕は寝ていた。
「もしもし、私はイムといいますが、中山さんですか?」
僕は流ちょうな日本語だったので最初は日本人かと思った。
「私はイムといいまして、韓国のキム君の友人です」
そこまでいわれてやっど合点がいった。松坂の名前はキム・マーティンというのだ。
「私たちは今日はお休みで、これから靖国神社に行って、ディズニーランドに行こうと思っています。中山さんの予定はどうなっていますか」
僕はその日は特に予定がなかった。
「そうですか。ではこれから九段下で待ち合わせしましょう。私たちは今すぐ出ますので」
「あ…いや、あの…」
なにしろ僕は、彼の電話で起きたところなので、どんなにがんばっても九段下に着くのは1時間後にはなる。僕はそのことを一応そのイムさんに伝えておいた。
「ではお会いできるのを楽しみにしています」
イムさんはそう言って電話を切った。
それにしても流ちょうな日本語だ。たぶんクリスチャンの団体のひとりなんだろうが、
しかし日本の携帯電話を持っているのはどういうことなんだろう。在日の人だろうか。
それにしても松坂とは久しぶりだなあ。 などと思いながら、僕はごそごそと起き出して出かける準備を始めた。
結局1時間では間に合わなくて、九段下に着いたのは二時四十五分くらいだった。ホームに降りてすぐに電話をかけた。すぐに出たイムさんの口調は重かった。
「ああそうですか。いま着いたんですか」
電話口からは笑い声が聞こえる。いったいどこにいるんだろう。
「いまですか? いま首都高にいます」
「あ、車なんですか」
「そうなんです」
なるほど。ということは渋滞して遅れているんだろう。それで困ったような声で話しているんだろう、イムさんは。僕はそう思った。
「で、いまこちらに向かってるんですね」
しかしイムさんの答えは全然違った。
「いえ、ディズニーランドです」
「は?」
「もう靖国神社は終わって、いまディズニーランドに向かってます。中山さんもいまからディズニーランドに来てください」
「……」
僕はしばらく声が出なくて黙ってしまった。確かに遅れた僕も悪い。悪いけれども待っててくれてもよさそうなもんだ。それに電話して「今すぐ出ろ」というのもひどいんじゃないの? などと思いながらとりあえずその日はキャンセルした。
しかし待っててくれたとして、そのままディズニーランドに連れて行かれるのを想像したところで、僕は行っちゃってもらっちゃってよかったかもな、と思い直したりした。いずれにしても、せっかちな韓国人なのであった。
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文・中山茂大
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ソウルの
食べ方歩き方
文:中山茂大
写真:Ju Jun Yong
イラスト:水野あきら
山と渓谷社
1200円(税別) |
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ロバと歩いた
南米・アンデス
紀行
中山茂大
(なかやましげお)
双葉社
1,600円(税別) |
「ソウルの食べ方歩き方」の著者・中山茂大の記念すべきデビュー作。ロバとともに南米大陸5700キロ徒歩の旅。強盗に襲われ、大雨にみまわれ、寒い日も暑い日も歩き続けた307日の記録。貧乏トラベルライター中山の原点がここにある。
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ベトナム横丁
喧喧録
水野あきら
(みずのあきら)
文・イラスト
三修社
1,400円(税別) |
「ソウルの食べ方歩き方」の詳細なイラストマップでもその持ち味を充分に発揮してくれた水野あきらの代表作。この本ではイラスト同様味のある文章で我々をベトナムに誘う。人込みの中でしゃがみ、街の底から、底抜けの活気の正体を見つめたベトナムの絵解き見聞録。カラーイラスト多数。
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四国霊場
徒歩遍路
小野庄一
(おのしょういち)
文・写真
中央公論新社
1,700円 |
弘法大師・空海の足跡を訪ねながら四国八十八ケ寺・1,400キロに及ぶ道程を48日かけて歩いた写真家が見たこと、感じたこと。スピリチュアルな写真と珍道中のエピソードで綴るフォト&エッセー。振り回され、助けられ、途方に暮れながら、少しづつ進んでいく等身大の徒歩遍路を読者も体験できるであろう。徒歩遍路必読ガイド&地図付き。
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